先日、イタリアのお客さまから一通のメールが届きました。
「昨日、妻と私はいつも通りMiArtへ行ってきたよ。
我々は、君たちが今年はいないということは知っていたから
少し哀しかった。今年のフェアは、規模が小さくなっていたし、
参加画廊はほとんどがイタリアの画廊だった(フランスや、イギリス
の画廊も少しあったようだが)。
我々は、何も購入しなかった。
もし、よければこれからも君らのカタログを送ってくれるかい?
そして、ヨーロッパの他のアートフェアに参加する時には知らせて
ほしい。(例えば、バーゼル、ボローニャ、ロンドンとか)
また君に会えることを望んでいるよ。」
(イタリア在住、C夫妻より) 2009年4月19日
4年連続で、この時期はミラノのアートフェアMiArtに参加をしていたギャラリー北井ですが、今年は審査段階で通過せず、参加が出来ませんでした。 今年から、ディレクターが交代し大幅な変更があったことは、昨年の審査段階から感じていましたが、お客さんからのメールで、想像以上にドメスティックなフェアに変更されていたのだと知りました。
C夫妻は、弊社がMiArtに初めて参加した2005年から作品を購入してくれているお客さまです。最初の出逢いは印象的でした。弊社のブースに訪れて、ブース内をフーと見渡した後、我々に「Please explain me」と素晴しい笑顔で問いかけてきました。その年は北井社長が懇切丁寧に説明をした書作品を購入しました。その年から、毎年カタログと、招待状を送りました。彼らは、必ず毎年弊社のブースに訪れ、2007年以外は、作品を購入してくれていました。昨年は、ある作家さんの作品を気に入ったのですが、予算に見合う適当なサイズの作品が既に売れてしまっていたため、「彼女(作家)の作品で、予算に見合うサイズのものを見繕ってメールで画像を送って下さい。その中から選んで購入します。作品は来年あなたがMiArtにきた時に渡してくれればいいから。来年ミラノに来たら一緒に食事しよう」と言って北井社長に未だ観ぬ作品の代金を渡して、ブースを去っていきました。その後、メールでやり取りをし、きちんと作品はお送りしましたが、今となっては先に作品をお送りしておいて良かったな…と。
我々も作家さんも今年のMiArtに参加出来ないこと(正確には、毎年、作品を楽しみにしてくれているお客さんに作品をお見せする機会を今年は得られなかったこと)を残念に思っていましたが、お客さんの方も同じような気持ちでいてくれたことを知り、少し切なくもあり、嬉しくもあり、また励みになりました。
作家さんの作品と、お客さんを繋ぐのが画廊の仕事です。そこには当然のこととしてお金のやり取りも言葉も存在しますが、お金でも、言葉でもないそれを超えたコミュニケーションが存在しているのだと、こういうやり取りの中で実感します。作品っていうのは、一体なんなのだろうか、という問いの応えを、このご夫婦はごく自然に示していてくれているように思いました。
C夫妻をはじめ、イタリアのお客さんに今年は会えないのは残念ですが、次回、どこかでまた会えると確信しています(バーゼルとか、ボローニャとかだといいなあ)。
このメールを励みに次の出逢いの場所を模索してゆきたいと思います。
写真は2008年、ミラノから日本への飛行機内より北井社長撮影
村越